サクラ咲く

春は始まりの季節。多摩川の桜並木。

　「中本さん。車できたから取りに来てヨ。」

　土手の散歩道に、春の草花が咲き始めた3月9日。丸山さんからミッションの修理終了の電話があった。まぁ、遠慮していると何時までたっても修理が始まらないので、無理やりねじ込んでもらって修理して頂いた。
　お願いしたのは、ミッション由来の激しい振動とガタピシ音の低減。原因は全て回転軸に由来する問題ばかり。従って、ギアケース内のベアリング類を交換してもらった。果たして、どんなミッションになるのだろう・・・。

　エンジンを掛けてみる・・・うッ、音がまるでしない。これまでクラッチを切らない限り鳴り続けていたガタピシ音が、すっかり鳴りを潜めた。もぉ、心臓がドキドキするほど嬉しい。

　ガタピシと出会って二度目の春を迎えている。休日のほとんどを一緒に過ごした。お陰で爪の中は油染みで貫禄が増したし、バネ指も二本に増えた。桜が咲いた土手沿いの並木道を走ってみた。
　タンタンタン・・・2ストの排気音が心地よい。あれほど気になっていた「人目」が、気にならなくなった。・・・関わった充実が、そう感じさせるのかも知れない。
　乗り心地？そうねぇ。アルファロメロのオープンカーに乗っても味わえないだろうなぁ、こんな感じ・・・遠い昔の幼馴染と、肩を抱き合いスキップするように温かい・・・。



ミゼットは子供たちに大人気だ。「可愛い～ッ」の連呼。彼らにとって、この車は珍しいのではない。「新しい」なのだ。

　古い車だからと言って、もちろん隠居なんかはさせない。君には新しい仕事が待っている。その荷台に、子供たちが楽しみに待つ紙芝居セットを積み込んで、僕と一緒に小学校を回るんだ。どう、なかなか良いだろ？

　君を見たら、きっと驚くだろうなぁ子供たち。ヘンテコリンの「おかしな車」だって。僕と一緒に、これから始まる子供たちの新しい半世紀を祝福しよう。

　タンタンタン・・・青空を隠すように広がった桜の下を走っている。途切れることなく青空は賑やかだ。未来もそうでありたいと願う・・・これまでもと、これからも。だってさぁ、振り返るだけじゃ～つまらないモンッ！

これからも、ヤルゾッ！

多摩川クラブ