いきなり「田んぼ」だった・・・。甦る夏日となった２日土曜日、多摩川の中流域・稲城市で第一回目となる「大丸ガサガサ探検隊」が開催された。ここは多摩川右岸側の東京都であり、お隣りは川崎市。
　川づたいに入ると、やおら背の高い高圧線と「梨畑」と「田んぼ」・・・場違いな田舎が出迎える。対岸の東京や川崎市では、とっくの昔に絶えた「のどかさ」だ。

　ガサ入れするのは地元に古くから在る用水路「大丸用水」。覗いてみると、これまたウソのような「素掘りの水路」が残っている。時代はすでに平成時代。まるで四つ角でバッタリ、明治生まれの「頑固・祖父さん」に鉢合わせた気分だ。

　主催は、稲城第六小学校の父母らで作る「ダディーズ」。見回した所、「ひろみ・郷」は居ない。でも「いけいけ・GOッ」は居た。

　久しぶりに広がった入道雲のふもと、新興住宅の街「稲城市」で、チョット古くて新しい「初めて・・・」が始まった。

　イベントを開始した時間、水路には水が無かった・・・。気を利かせた水利組合が、水量を抑えたためらしいが、慌て水を流してもらう。おかげで前半は、「水溜り」での魚すくい状態・・・。流れてきた水は、とても冷たかった。

　網を入れると、水路なのに魚は万遍なく居る。網に入る魚種は、用水引き込み地の府中前に等しいが、水路ならではの変化もあった。マシジミは水路中に広く分布しており、集中分布地としては多摩川水系の最下流域となりそうだ。
　水質も府中より水路に入るため、本流では途中で混入される下水処理水などが無く、水質の状態はすこぶる良い。従って人工の水路でありながら、本流と同等以上の環境を維持している。

　多くの用水路がコンクリート化して行く中、稲城市を流れる「大丸用水」は希少な存在と言える。　

交代しない「新」と「旧」

　水路を行くと、水路に隣接した宅地の窓が開く。顔を出す主婦が声を掛けた。「何か獲れる？ザリガニ少なくなっちゃたでしょ・・・」　どうやらこの主婦、水路は気に掛けている場所らしい。
　途中参加のお年寄りが、水路に入り魚をすくってみせた。

「その石の下、手を突っ込んで見ろ・・・プルプルって来たら魚だ」先回りしては、魚をほとんど獲って置いてくれる・・・きっと、嬉しいのだろう。
　水路ではしゃぐ子どもを見て「危ない」と言う大人が居ない。窓の下で遊ぶ子どもに「うるさい」と怒鳴る人も居ない。・・・多分、それが素掘りの水路が残る由縁なのだろ。

　稲城市は川を越えた「東京都」である。水の流れは時として、埋まらぬ隔たりを生むこともある。遮る「川」は、東京にも川崎にもない「新・旧」不思議なバランスを残した。それはきっと、自慢すべき事なのだろう・・・。(賢)