今週末の17日は、今年三回目となる水神祭が、稲城市の北緑地公園前の河原で初開催される。この水神祭では、初の寒中禊（みそぎ）を行う予定で、下帯一枚で多摩川での「冷水浴び」が行われる。
　近年、下水処理場の温排水が話題になる多摩川だが、真冬の多摩川が暖かいのか、やっぱり冷たいのか・・・ヌフフ、参加者の無事(？)を祈りたい。

　暴れ川として、流域の暮らしを脅かした多摩川には、水神を祭る神社や祠(ほこら)が中下流域だけでも二百社以上あったとされている。水は生命の根元、けがれを払い清める存在である一方で、一度洪水が起きるとすべてを破壊・・・かつて、「カワ」は尊く恐ろしい存在だった。

　現代の生活に慣れてしまうと、なかなか想像しにくいが、水神社を核にした「水神講」は、昭和の始め頃まで流域各地に残っていた。「講」とは、宗教上での志を同じくする人々の集いで、参加したのは主に農業や河川に生業を持つ人々だった。

　文献を調べると、戦後まで東京狛江市と川崎市宿河原の漁師たちが講を組んで水神祭を行い、また調布市でも川漁・渡船・筏流しの人々が、8月15日に水神祭りを執り行った記録が残っている。

　今では、典型的な都市型河川となったが、つい最近まで・・・いや、ほんの少し前までこの川には、祭る人々と祭られる「神」が居た川だった。

　高度経済成長が始まる三十年代に入ると、流域では急激な都市化が進み「汚染時代」が始まる。川は異臭を放つ用水路と化し、進化を生めない「流域文化」を消し去った。

　かつては河畔各所に祀られていた水神祠。今では敬う人もなく、祠は草に蒸したり出水によって流されたり・・・再建を願う声もなく多くが消えている。

　一昨年前、多摩川を襲った台風九号は流域に大きな被害をもたらした。自然の猛威が、人の力ではどうにもならない事を思い知らされる災害となった。水辺の暮らしはすっかり変わったが、長い時間を経ても変わらない「コト」も有るのかも知れない。

　流域430万人の故郷・多摩川。文化無き自然が郷土愛を育むことはない・・・。水神祭の復活が、「神頼み」にならないことを願っている。(賢)