第 342号　　多摩川クラブトピックス　2016/03/27 25:30発表

小杉「ツクシ」の背くらべ

小杉に乱立するのは、何もタワーマンションだけではない。田園風景時代から続く、小杉の春の風情・・・伸び伸びと、「ツクシ」だ。後ろのハイテクビルでも、そう簡単には越えられない。

　「けんさん、やっと出ましたヨ！」27日。中原区小杉陣屋町で先月のフキノトウに続き、今度は場違いなツクシが顔を出し始めている。フキノトウの報告以来、地元安藤さんが子供の頃の記憶を頼りに見回りを続けて見つけた。

　場所はJR小杉駅にほど近い小杉町2丁目291番地。新旧の住宅が入り混じる小杉ならではの住宅街だ。すぐ前の広大な敷地では、また新たに建つ巨大タワーマンションが2棟建築中と言った景色も続く・・・これほど「ツクシ」が似合わない街並みもそお多くはない。

　ツクシが、道路脇に並べられたゴミ箱と駐車場を仕切るフェンスの隙間で、場違いな「和み」を生む。年々と季節感が乏しくなる小杉の街並みだが、思わぬ場所で春の訪れを伝えているのが面白い。



道路右側から駅方向を見る。大型のゴミ箱が並び、その後ろのフェンスとの隙間にツクシは並んでいた。ちなみに、どちらも東京ガスの社員寮のものだ。昭和20年の航空写真でみると、ここには田んぼが広がり、前の道は水路が通っている。水路脇のツクシ・・・春の当たり前乗り景色が、組み合わせが変わると・・・こうも違うかぁ。

奔走する「安藤」さん

地元生まれの地元育ち。激変する故郷に、本人も戸惑っているようだ。仕事の合間に視察に付き合ってくれた。渡されたのは、小杉町の古い資料・・・「いい町にしたい」その想いは本気だ。

新たなタワーマンションの建設が進んでいる。再び訪れた小杉の活気・・・ものは違えど、双方の伸びに繋がりが生まれると、ホトホトに面白そうだけどなぁ。

普通じゃない？

　足早に駅へと向かう人々が、こちらを不思議そうに見ている。そりゃ、決して若くは見えないオヤジ二人が地面に這いつくばり、ニコニコとカメラを構える構図は普通じゃい・・・しかし、ツクシ越しに見るタワーマンションは、人目が気にならないほどオモシロイ。

　新旧が激しく入れ替わる小杉町。かつてここが、江戸で人気の「稲毛米」が生まれる大穀倉地帯であり、北部稲毛領の中心地だったことを知る人はあまり居ない。時代に振り回されながら、今再びその便の良さが注目され始めている。

　受け入れつつ、共存共栄を模索する人々。その存在は新しく尊い。小杉に生まれた春の背くらべが続くことを期待したい・・・次の百年は、普通じゃない方がオモシロイかも知れないなぁ。

　知りもしない「昔」を懐かしむワケにも行かないが、ゴミ箱の裏にヒョロリ顔を出した小杉の古い記憶に、久しぶりに初々しい「春」を感じた。(賢)

詳細

○観察日	3月28日　11時00分～11時50分
○場　所	川崎市中原区小杉陣屋町
○参　加	多摩川クラブ　丸子2名調布1名

多摩川クラブ　