樹齢120年を超える長十郎の古木が、花を満開にさせている。春の嵐が収まった9日、総合学習で梨の学習に取り組む市立・東大島小学校四年生32名が、この開花期に行う花粉付け体験を行った。場所は、川崎市多摩区にある太田農園。
  指導は喜八郎さん亡き後、梨の管理を引き継いだ太田孝之さんだ。農繁期の今、勤め先である会社を半年間休んでの作業を続けている。

  農園規模縮小に当たり、切らずに残った長十郎の古木。農地の半分以上を失う中、こうして再び花を咲かせられたのは、先代の強い思いと、ご家族の大きな努力があったおかげ。すでに、この地は農業に優しくない土地になったしまった。

　子供たちが、初めての梨園で熱心に授業へ取り組んでくれている。その姿に、わずかな希望を感じさせた。

「・・・おじさん、この梨の赤ちゃん美味しいよッ！」

生意気に気遣いをしていやがる・・・日焼けした孝之さんの顔に、白い歯がこぼれた。四月九日、梨棚を埋める白い花。梨農家の一年が、また始まろうとしている。