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| ガサガサしていたら、上流からこんなのが転がって落ちて来た・・・。魚とは直ぐに分からなかったが、なんと「ランチュウ」。これにはウケた。いやはや、多摩ニュータウンは世界一オモシロイッ！ |
2025’ 多摩川ノート
大栗川 ガサガサ
多摩ニュータウンの川。その本性を確かめに行った
| ○ 観察場所 | 八王子市・多摩川合流点から源流マデ。 |
| ○ 観 察 日 | 2025年4月30～5月20日 |
| ○ 制 作 日 | 2025年5月22日 (脱稿) |
| ○ 観察と記録 | 多摩川クラブ 中本 賢 |
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| ガサガサしていたら、上流からこんなのが転がって落ちて来た・・・。魚とは直ぐに分からなかったが、なんと「ランチュウ」。これにはウケた。いやはや、多摩ニュータウンは世界一オモシロイッ！ |
流域の地形図
 |
| 青い線が「大栗川水系」。浅川からは多摩丘陵を挟んだ位置になる。水源から多摩川合流点まで約12.5㎞、高低差で約90ｍの多摩川支流。 |
大栗川ガサガサ
| 多摩ニュータウンの川は、稲城市の三沢川に継いで二回目。今回の大栗川は、そこから丘を占領するゴルフ場四つ越えた隣を流れている。 流域のほとんどがニュータウン化、手付かずの自然なんかほぼ無い。まぁ～、都合良く造成された排水路のような川・・・と思われている。 したがって魚類調査などする奴ぁまず居ない。だから、やれば必ず面白いコトになっている。 見落とすが、丘陵生まれの豊富な湧水は太古の昔と何も変わっていない。たとえ三面コンクリートでも、清流が流れていれば何かが起きているかも知れない・・・多摩川だって泡だらけの時が一番面白かった。 思えば吉日だ。愛車カブ号に跨り、小さな希望探しにいざ出発ッ！ |
浅川合流地点
(標高43.8ｍ地点)
| 旅の始まりは穏やかだ。ここは多摩川の河口から34.4㎞地点。浅川の合流点からは3㎞ほど下流の位置にある。水は良く澄んでいて、河床はグリとジャリの構成。良く動いているようだ。 |
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P01「合流点のガサガサ結果」
| ○実 施 日 | 4月30日 9時30分～10時32分 |
| ○採取時間 | 22分 |
| ○使用漁具 | 「サデ網」3㎜網目60㎝幅を使用 |
| ○水 温 | 24.2℃ |
| ○状 況 | 澄んでいる。生き物密度 (少ない)。 |
| 採取した水生動物 | |||||
| 魚種(大きさ) | 数 | 魚種(大きさ) | 数 | ||
|
01 |
ウキゴリ (11ｃｍ)) |
1 |
05 |
オナガサナエ (2.5～3ｃｍ) |
2 |
| 02 |
シマドジョウ (4ｃｍ) |
1 |
06 |
ガガンボ (3.5ｃｍ) |
1 |
| 03 |
ヌカエビ (1～3ｃｍ)) |
44 |
07 |
ヒラタカゲロウ (1ｃｍ) |
1 |
| 04 |
ﾊｸﾞﾛﾄﾝﾎﾞ・ﾔｺﾞ
(2～4ｍ) |
2 |
― |
――― |
―― |
| 計 7種 52匹 | |||||
 |
|
上流へと移動するが、高い護岸壁と張り巡らされたフェンスで降りる場所がない。飛び降りたら捻挫する高さだった。 |
乞田川との分岐点
(河口から1㎞ - 標高46.7ｍ地点)
| 乞田川との分岐点で、やっとフェンスの切れ目を発見。護岸壁の隙間を縫って川に降りる。ほほぉ～、合流しても後でも水は良く澄んでいる。生き物は、ほとんどが合流地点近くにあった雨水排水用の樋水門下のガサガサで入った。 |
 |
P02「乞田川との分岐点」のガサガサ結果
| ○実 施 日 | 4月30日 11時18分～11時41分 |
| ○採取時間 | 20分 |
| ○使用漁具 | 「サデ網」3㎜網目60㎝幅を使用 |
| ○水 温 | 20℃ |
| ○状 況 | 澄んでいる。生き物密度 (少ない)。 |
| 採取した水生動物 | |||||
| 魚種(大きさ) | 数 | 魚種(大きさ) | 数 | ||
| 01 |
ギンブナ (6～8ｃｍ) |
2 |
04 |
ヌカエビ (1～3ｃｍ)) |
38 |
| 02 |
モツゴ (7ｃｍ)) |
1 |
05 |
ｱﾒﾘｶｻﾞﾘｶﾞﾆ (5～7ｍ) |
3 |
| 03 |
オイカワ
(6ｍ) |
1 |
06 |
ﾊｸﾞﾛﾄﾝﾎﾞ・ﾔｺﾞ (3～4㎝) |
4 |
| 計 6 種 約49匹 | |||||
霞ヶ関橋下
(河口から1.9㎞ - 標高48.8ｍ地点)
| |
 |
P03「霞ヶ関橋下」のガサガサ結果」
| ○実 施 日 | 4月30日 11時52分～12時10分 |
| ○採取時間 | 12分 |
| ○使用漁具 | 「サデ網」3㎜網目60㎝幅を使用 |
| ○水 温 | 20℃ |
| ○状 況 | 澄んでいる。生き物密度 (少ない)。 |
| 採取した水生動物 | |||||
| 魚種(大きさ) | 数 | 魚種(大きさ) | 数 | ||
| 01 |
ヌカエビ (1～3ｃｍ)) |
66 |
03 |
ﾊｸﾞﾛﾄﾝﾎﾞ・ﾔｺﾞ
(2～4ｃｍ) |
12 |
| 02 |
ｱﾒﾘｶｻﾞﾘｶﾞﾆ (5～7ｍ) |
2 |
04 |
ｵﾅｶﾞｻﾅｴ (2.5～3ｍ) |
2 |
| 計 4種 約 82匹 | |||||
和田中学校前
(河口から4.0㎞ - 標高54.8ｍ地点)
| 昔は、川の氾濫が多かった場所。宅地化する時に、蛇行していた川を真っ直ぐに改修している。生き物はほとんど居ないが、ここでも水は恐ろしく美しかった。 |
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P04「和田中学校前」ガサガサの結果」
| ○実 施 日 | 4月30日 12時23分～12時51分 |
| ○採取時間 | 20分 |
| ○使用漁具 | 「サデ網」3㎜網目60㎝幅を使用 |
| ○水 温 | 23.0℃ |
| ○状 況 | 澄んでいる。生き物密度 (少ない) |
| 採取した水生動物 | |||||
| 魚種(大きさ) | 数 | 魚種(大きさ) | 数 | ||
| 01 |
ｱﾒﾘｶｻﾞﾘｶﾞﾆ (6㎝) |
1 |
03 |
ｵﾅｶﾞｻﾅｴ
(2.5～3.ｃｍ) |
2 |
| 02 |
ヌカエビ (2～3ｃｍ)) |
55 |
04 |
カワニナ (2～3..5ｃｍ) |
18 |
| 計 4種 約 76匹 | |||||
※カワニナ初出。
(河口から6.6㎞ - 標高74.2ｍ地点)
| 川に面した公園。丘の裾野が川に近づき、排水路の合流点が多くなった。左岸からは堀之内の谷戸から湧水路出口。右岸からも湧水を集めた排水口が合流している。水は澄んで冷たかった。 |
 |
| ○実 施 日 | 4月30日 13時19分～13時52分 |
| ○採取時間 | 30分 |
| ○使用漁具 | 「サデ網」3㎜網目60㎝幅を使用 |
| ○水 温 | 本流24.0℃ 流入水17.0℃ |
| ○状 況 | 澄んでいる。生き物密度 (少ない)。 |
| 採取した水生動物 | |||||
| 魚種(大きさ) | 数 | 魚種(大きさ) | 数 | ||
|
01 |
カワムツ (2～3.5ｃｍ) |
13 |
03 |
ヌカエビ (2～3ｃｍ)) |
50 |
|
02 |
ドジョウ (8～13ｍ) |
2 |
04 |
カワニナ (2～3.5ｍ) |
3 |
| 計 4種 約 68匹 | |||||
※カワムツ幼魚の群泳を確認。
 |
大栗川公園
(河口から7.5㎞ - 標高78.9ｍ地点)
| ここで大栗川は二つに分岐。下流から見て左に「太田川」、右側が大栗川本流だ。すでに丘に囲まれた場所で、背後には湧水の山々が連なっている。 さて調査は二日目。今日は近くに在る中央大学の学生六名が参加してくれて、楽しいガサガサになった。 |
 |
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| 山に近づく大栗川。水温が一気に下がった。カワニナの数も極端に多くなっている。水質も山の水に変化しているのかも知れない。生き物の変化が様子を伝えてくれた |
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P06「大栗川公園前」のガサガサ結果」
| ○実 施 日 | 4月30日 10時10分～11時20分 |
| ○採取時間 | 55分 (実施者9名) |
| ○使用漁具 | 「サデ網」3㎜網目60㎝幅を使用 |
| ○水 温 | 18.5℃ |
| ○状 況 | 澄んでいる。生き物密度 (やや少ない)。 |
| 採取した水生動物 | |||||
| 魚種(大きさ) | 数 | 魚種(大きさ) | 数 | ||
| 01 |
カワムツ
(8～11ｃｍ) |
5 |
07 |
ギンヤンマ (4ｃｍ)) |
1 |
| 02 |
ドジョウ (9～13ｍ) |
7 |
08 |
ｵｵﾔﾏﾄﾝﾎﾞ (3.5～4ｍ) |
2 |
| 03 |
ランチュウ
(8.5ｃｍ) |
1 |
09 |
ヌカエビ (2～3.5ｃｍ) |
100～ |
| 04 |
ｵﾅｶﾞｻﾅｴ (3ｍ) |
4 |
10 |
ｼﾏｲｼﾋﾞﾙ (4ｍ) |
1 |
| 05 |
ﾊｸﾞﾛﾄﾝﾎﾞ
(2～3.5ｃｍ) |
6 |
11 |
カワニナ (2～3.5ｃｍ) |
未ｶｳﾝﾄ |
| 06 |
ｺｵﾆﾔﾝﾏ (3.5～4ｍ) |
2 |
12 |
―――― |
―― |
| 計 11種 約 129～匹 | |||||
| 川から街を見上げると面白い。飲めそうなくらい美しい水が、コンクリートの隙間で落ちている。この水がある限り「大栗川」の未来は明るいと感じた。 |
 |
| まるで「基地」のよだ。落差工とは、川底に段差を付けて流れの勢いを殺すための施工法。こちらの都合だけで作るとこうなる。得られる安心は大きいが、失われる「関わり」は大きい。 |
| 大栗川の本流には、環境の指標となる生き物が居ないことが分かった。丘陵内の湧水路も、余すことなく造成されている。美しい湧水も側溝や土管を通して、川へと廃棄されていた。川が価値を失うと、全てを失うことが良く分かった。 |
谷戸の水源探し
| 本流から離れ隣接する「谷戸」を探索することにした。堀之内地区には、宅地化されず緑地保護区になった場所が点々と在る。ニュータウン計画に当初から反対した地権者方々の運動で、現在は都の里山保全地域として残すことが出来た。 無くなる筈の物が残っている。新しい希望に出会えるかも知れない。点在する谷戸公園を見て回った。 |
 |
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| 谷戸の形は残っていたが水が無い。後ろの森が消えてしまっているからだ。山に浸透する地下水量が減少して、表流水を支え切れなくなっている。水路にも水は無く、手押しポンプで汲み上げていた。 残念だが水脈を失った谷戸に本来の機能はない。水は人の暮らしの基本。形だけ残しても、次の未来は生まれない。 |
宮嶽谷戸
| 最後に、堀之内で一番奥地にある谷戸を目指した。尾根には平山城址や東京薬科大学の校舎乗っているが、谷戸側の斜面の森は殆ど残っている。ただ、近年八王子市の公園整備があったと聞いていたので期待薄だったが、行くと水源がしっかり残る谷戸だった。 |
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| 古くから在った谷戸の溜池を、八王子市が再整備して去年リニューアルオープン。池の水は奥の山からの湧水。役所の整備が池だけに留まったおかげで、そこから奥の自然が残った！ |
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| 池から奥に進むと、素掘り水路と水の張った田んぼが現れた。さらに山裾に進むと、谷戸の水源となる湿地帯が現れた。足がズブズブと沈むほど豊富な湧水が湧き出している。 ニュータウンの中で、まさか機能を残す「ありのまま」と出会えるとは・・・感動で言葉を失った。 |
谷戸の湧水路ガサガサ
| 水源の湧水は豊富に噴き出し、田んぼと繋がる水路も素掘り。そんな残された環境に、どんな生き物が暮らしているのか調べたが、驚きの結果だった・・・。 |
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P07「谷戸湧水路」ガサガサの結果
| ○実 施 日 | 5月19日 13時08分～14時32分 |
| ○採取時間 | 27分 |
| ○使用漁具 | 「サデ網」3㎜網目60㎝幅を使用 |
| ○水 温 | 18.5℃ |
| ○状 況 | 澄んでいる。生き物密度 (多い) |
| 採取した水生動物 | |||||
| 魚種(大きさ) | 数 | 魚種(大きさ) | 数 | ||
| 01 |
メダカ (3～3.5ｃｍ) |
5 |
07 |
ｱｶｶﾞｴﾙ・ｵﾀﾏ (4ｍ) |
1 |
| 02 |
ホトケドジョウ (6～7.5ｃｍ) |
57 |
08 |
サワガニ (1ｃｍ)) |
1 |
| 03 |
ドジョウ (9～13ｍ) |
7 |
09 |
ｱﾒﾘｶｻﾞﾘｶﾞﾆ (6～8ｍ) |
13 |
| 04 |
ヤマサナエ (2.5ｍ) |
2 |
10 |
ヌカエビ (2～3.5ｃｍ) |
80～ |
| 05 |
オニヤンマﾞ (3.5～4ｃｍ) |
3 |
11 |
カワニナ
(3～3.5ｃｍ) |
60～ |
| 06 | 12 | ||||
| 計 10種 約 229～匹 | |||||
大栗川の始まり
| 気を取り直して本流に戻る。行政的な川の始まりも確認しないと旅が終われない。地図を確認しながら川筋を追った。 |
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| 唐突に大栗川が遮断されている。突き当たったのは、多摩美術大学の基礎コンクリートの壁。そこに開いている穴が、どうやら大栗川の始まりらしい。 誰に見せたいのか知らないが、横に建てられた看板がマヌケで面白かった・・・。 |
多摩ニュータウンの希望
| 水源地域のこの辺りは「鑓水(やりみず)」という地名が付いている。いわれは、「槍で山を突くと水が出るほど水の豊かな土地」だからだそうだ。 湧水利用の歴史はもっと古い、三万年以上前の旧石器時代から縄文時代の人々も、その豊かさに導かれて住み始めている。遺跡がここに集中する理由だ。 |
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| 二日間、川の中から街の在り様を眺めて来た。人の都合で作られた川の形と、太古の昔から変わらず流れる美しい水のバランスが釣り合わず面白かった。 昔が良かったと思っているワケじゃない。土地の長所を使わないのが勿体ないと感じているのだ。使って共存する豊かさは魚たちが教えてくれた。 見た目を気にしても始まらない。丘を削って宅地にしたからと言って雨が降らなくなったワケじゃない。清水は変わらず豊富のままだ。僅かに残った谷戸湿地にだって、希少な生き物たちがまるで雑魚のように暮らしていた。 実は、失ったようで何も失っていない。知らなければそのままだが、知れば新たな希望が生まれるかも知れない。 今月28日から、由木の子供たちと「大栗川・ガサガサ探検隊」の総合学習が始まる。この調査はその準備として行った。伝えたいことが一杯。この子たちと一緒に夢を見ようと思っている。 |
2025年5月22日 中本賢
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