４月１日、新年度を迎え世間は慌しい。国民年金値上げにガソリン税・・・話題多き船出のようだ。川は淡々と「普段」を装う。つくしが顔を出し、ひと風ごとに春は爛漫を迎えて、流れが滞る事も無く流水は海を目指している。鬱陶しい毎日も、黙して「せせらぎ」を聞くうちに、何故かひとごとに思えるから不思議だ。

　それにしても・・・重いッ。登り落しの仕掛けだ。少々水かさが増しても流されないよう、木工品から単管パイプ仕様に変えたはいいが、ずっしりと重くなった。土手を越え堰堤直下まで約三百メーター・・・道具の詰った仕掛け箱を右手に持ち、裕に三十キロはある単管パイプのストツパーを左肩へ・・・歩く振動でパイプが肩にめり込む感じだ。

　一度では済まない、合計三往復。のぼり板に、これまたニメートルを超える単管パイプ三本担ぐ頃には、もうへろへろもへじ・・・。目まいがして来た。しかし、運んだだけでは終わらない。スパナ片手に仕掛け組んで、流れ止めの土嚢袋に砂利を詰め込んで、へっこら積み上げようやく終了。

　・・・と、思いきや、仕掛けた場所に水が流れ落ちていない。堰堤の上に行って見ると、小山のように溜まった土砂が、水を堰き止めてしまっている・・・。トホホ、水が無ければ魚は仕掛けを登れない。｢ジョレン｣を家に取りに戻り、溜まった土砂を陽が暮れるまで取り除いた。

　やっとのことで終わった。足元がふらふらだ。でも、やり遂げたスガスガしさがないワケでもない。陽の暮れた河原で一服しようと、流木に腰掛けると流木もろとも、ひっくり返った・・・。

　別に頼まれてやっている訳ではない。物好き高じて止められなくなっただけだ。起き上がるのもめんどうなので、ひっくり返ったまま煙草に火をつけてみる。

　暗い空に浮かぶ月が、少し膨らんでいる。今日は長潮、明日が若潮・・・まだまだ魚は動きそうもない。

　「ガソリン安くなったら、どっか遠出でもして見るかなぁ・・・」

　絶対に行くわけもない無駄妄想。背中の砂利は、案外冷たかった。(賢)