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2011’多摩川ノート
自然との共存「マアイ」の形
自然災害の多発国「日本」
人はどのように共存を図ったか
| ○ 観察期間 | 2011年4月13日〜 |
| ○ 作制日 | 2011年5月1日 |
| ○ 観察場所 | 山里：愛媛県喜多郡内子町 川登・石畳・河内地区 川里：静岡県焼津市上新田 輪中と水屋の地区 海里：宮城県気仙沼市唐桑 三陸の主要漁業地区 |
| ○ 観察とﾚﾎﾟｰﾄ | 中本 賢 |
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| (写真01) 四月十三日、三陸に咲いた「ﾀﾝﾎﾟﾎﾟ」。花は海を向いていた。 |
はじめに
| 自然災害を多発させる日本の自然。地震や台風そして洪水など、細長く南北に伸びる国土では様々な災害が起きます。 複雑な海岸地形は津波を増長させ、また国土中央部を走る脊梁(せきりょう)山脈では土砂災害が頻発、ひとたび災害を起こせば、どれもただごとでは済まない地理環境に私たちの暮はあります。繰り返される自然災害に、多くの日本人が巨大な自然エネルギーへの無力さを感じていると思います。 この隣り合わせに存在する自然災害に対し、先人は長い歴史をかけ「共存」を試み続けて来ました。立ち向かうのではなく、あえて組み込まれることにより独自な間合いを生み、不安定な中にある「安住」を目指しています。 忍耐強くそしてしたたかに・・・知恵と工夫を重ねた、共存のための「カタチ」。日本の暮らしの基礎となった山辺・川辺そして海辺、それぞれにどのような暮らしがあったのか、現地を訪れながら検証したいと思います。 |
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| (写真02) 「畦端で一服」 昭和34年秋田県湯沢市大島 弘文堂・写真で見る日本生活図引より |
第一章
日本の自然
多発する自然災害と、被害を巨大化させる地勢
| 日本の国土は南北2,000kmに細長く伸びる島国。海岸線は入り組み複雑な海岸地形を連続させ、その距離は約35,000kmにも及ぶ。 この流さは諸外国と比較しても長く、国土面積当たりの海岸線延長では米国の約45倍、韓国の約4倍、英国の約2倍に達する。この長く複雑な海岸地形が、高潮や津波などの海岸線で起きる自然災害をさらに大きくする地勢にある。 |
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| (写真03) 関東大震災での津波被害 |
| 1923年（大正12年）9月1日、関東地方南部を襲った地震。死者・行方不明者10万5千余り、家屋の全壊10万9千、焼失21万2千という被害が出た。この地震でも沿岸部に大きな津波被害があった。 写真は鎌倉市坂ノ下。津波は堤防を破壊し、密集する人家を飲み込む。津波により死亡者52名、重傷者約100 名。全戸数361戸の中、全壊161戸、半壊118戸、流失53戸、埋没６戸の被害を出した。家屋の大半が引き波によって流失している。 |
| 出典:「関東大震災の津波災害」 知られざる鎌倉探索（鎌倉市中央図書館蔵） |
| 内陸部でも、国土の六割以上が山地となり中央部を急峻な脊梁山脈が通るため、山地に降る雨が一気に海へと流下し、洪水や土砂災害などを頻発させている。また、少ない平野部に国民の約七割が密集しているため、平野部を襲う洪水や高潮では甚大な被害をもたらしている。 さらに、アジアモンスーンに位置する日本は雨が多く、台風の常襲地帯であることも重なり災害を常習化させる。台風の日本への上陸について見ると、平均毎年3個が上陸し、2004年は10個の上陸が記録され観測史上最多となっている。 |
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| (写真04) 伊勢湾台風による高潮被 |
| 1959年9月。大型の台風が東海地方を襲い、死者行方不明者約５千人、流出・全半壊家屋約１６万戸に及ぶ被害が発生した。 |
| 出典:伊勢湾台風50年連絡会 |
(参考文献・国土交通省 平成18年度国土交通白書ほか)
図表01戦後に起きた主な自然災害
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年 月 日 |
災 害 名 |
主な被災地 |
死者・行方 不明者数 |
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1945.1.13 |
三河地震（M6.8） |
愛知県南部 |
2,306人 |
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1945.9.17〜18 |
枕崎台風 |
西日本（特に広島） |
3,756人 |
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1946.12.21 |
南海地震（M8.0） |
中部以西の日本各地 |
1,443人 |
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1947.8.14 |
浅間山噴火 |
浅間山周辺 |
11人 |
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1947.9.14〜15 |
カスリーン台風 |
東海以北 |
1,930人 |
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1948.6.28 |
福井地震（M7.1） |
福井平野とその周辺 |
3,769人 |
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1948.9.15〜17 |
アイオン台風 |
四国〜東北（特に岩手） |
838人 |
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1950.9.2〜4 |
ジェーン台風 |
四国以北（特に大阪） |
539人 |
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1951.10.13〜15 |
ルース台風 |
全国（特に山口） |
943人 |
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1952.3.4 |
十勝沖地震（M8.2） |
北海道南部，東北北部 |
33人 |
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1953.6.25〜29 |
大雨（前線） |
九州，四国，中国（特に北九州） |
1,013人 |
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1953.7.16〜24 |
南紀豪雨 |
東北以西（特に和歌山） |
1,124人 |
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1954.5.8〜12 |
風害（低気圧） |
北日本，近畿 |
670人 |
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1954.9.25〜27 |
洞爺丸台風 |
全国（特に北海道，四国） |
1,761人 |
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1957.7.25〜28 |
諫早豪雨 |
九州（特に諫早周辺） |
722人 |
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1958.6.24 |
阿蘇山噴火 |
阿蘇山周辺 |
12人 |
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1958.9.26〜28 |
狩野川台風 |
近畿以東（特に静岡） |
1,269人 |
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1959.9.26〜27 |
伊勢湾台風 |
全国（九州を除く，特に愛知） |
5,098人 |
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1960.5.23 |
チリ地震津波 |
北海道南岸，三陸海岸，志摩海岸 |
142人 |
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1963.1. |
昭和38年1月豪雪 |
北陸、山陰、山形、滋賀、岐阜 |
231人 |
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1964.6.16 |
新潟地震（M7.5） |
新潟県，秋田県，山形県 |
26人 |
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1965.9.10〜18 |
台風第23,24,25号 |
全国（特に徳島，兵庫，福井） |
181人 |
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1966.9.23〜25 |
台風第24,26号 |
中部，関東，東北，特に静岡，山梨 |
317人 |
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1967.7.〜8. |
7,8月豪雨 |
中部以西，東北南部 |
256人 |
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1968.5.16 |
十勝沖地震（M7.9） |
北海道南部・東北地方 |
52人 |
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1972.7.3〜15 |
台風第6,7,9号及び7月豪雨 |
全国（特に北九州，島根，広島） |
447人 |
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1974.5.9 |
伊豆半島沖地震（M6.9） |
伊豆半島南端 |
30人 |
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1976.9.8〜14 |
台風第17 号及び9月豪雨 |
全国（特に香川，岡山） |
171人 |
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1977.1. |
雪害 |
東北、近畿北部、北陸 |
101人 |
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1977.8.7〜78.10. |
有珠山噴火 |
北海道 |
3人 |
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1978.1.14 |
伊豆大島近海地震（M7.0） |
伊豆半島 |
25人 |
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1978.6.12 |
宮城県沖地震（M7.4） |
宮城県 |
28人 |
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1979.10.17〜20 |
台風第20号 |
全国（特に東海，関東，東北） |
115人 |
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1980.12.〜81.3. |
雪害 |
東北、北陸 |
152人 |
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1982.7.〜8. |
7,8月豪雨及び台風第10号 |
全国（特に長崎，熊本，三重） |
439人 |
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1983.5.26 |
日本海中部地震（M7.7） |
秋田，青森 |
104人 |
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1983.7.20〜29 |
梅雨前線豪雨 |
山陰以東（特に島根） |
117人 |
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1983.10.3 |
三宅島噴火 |
三宅島周辺 |
─ |
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1983.12.〜84.3. |
雪害 |
東北、北陸（特に新潟、富山） |
131人 |
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1984.9.14 |
長野県西部地震（M6.8） |
長野県西部 |
29人 |
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1986.11.15〜12.18 |
伊豆大島噴火 |
伊豆大島 |
─ |
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1990.11.17〜 |
雲仙岳噴火 |
長崎県 |
44人 |
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1993.7.12 |
北海道南西沖地震（M7.8） |
北海道 |
230人 |
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1993.7.31〜8.7 |
平成5年8月豪雨 |
全国 |
79人 |
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1995.1.17 |
阪神･淡路大震災（M7.3） |
兵庫県 |
6,437人 |
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2000.6.25〜05.3.31 |
三宅島噴火及び近海地震 |
東京都 |
1人 |
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2004.10.20〜21 |
台風第23号 |
全国 |
98人 |
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2004.10.23 |
新潟県中越地震（M6.8） |
新潟県 |
68人 |
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2005.12.〜06.3. |
平成18年豪雪 |
北陸地方を中心とする日本海側 |
152人 |
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2007.7.16 |
新潟県中越沖地震（M6.8） |
新潟県 |
15人 |
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2008.6.14 |
岩手・宮城内陸地震（M7.2） |
東北（特に宮城、岩手） |
23人 |
参考資料
平成22年版防災白書/気象年鑑/理科年表/消防庁資料/兵庫県資料/日本被害地震総覧
出典：社会実情データー 4365
脆弱(ぜいじゃく)な国土
| アジアは世界の中でも自然災害が特に多い地域。死者の地域別割合で見ても、アジアが洪水、津波・高潮、暴風で8割以上、干ばつ、地震でも6割以上を占める。 また、自然災害による被害額でもアジアが全体の約46％を占め、中でも日本が全体の約15％を占めている。日本は、自然災害が多いアジアの中でも、さらにその位置・地形・地質・気象などの自然条件から、自然災害に脆弱な国土となっている。 |
図表-02 世界における自然災害被害額の地域別割合
| 地 域 | 自然災害被害額 | 割 合(％) | |
| アジア全体 (日本) (その他アジア) |
4,95 (1,668) (3,290) |
45.9 (15.4) (30.4) |
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| 米国 | 2,297 | 21.2 | |
| その他アメリカ | 788 | 7.3 | |
| ドイツ | 208 | 1.9 | |
| フランス | 205 | 1.9 | |
| 英国 | 152 | 1.4 | |
| その他ヨーロッパ | 1,718 | 15.9 | |
| オセアニア | 264 | 2.4 | |
| アフリカ | 222 | 2.1 | |
（注） 1970〜2004年における被害総額。
出典：国土交通省 平成18年度国土交通白書
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このように、私たちの暮らす国土は世界でも類を見ないほど厳しい自然環境の中にあります。しかし、私たち日本人はその厳しい自然環境を避けることなく、長い歴史をかけ共存の可能性を探り続けて来ました。 |
日本の「辺」の暮らし
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「山辺の暮らし」 | 山地での、斜面の利用方法を現地で検証。土石流や山体崩壊と言った災害地区で、災害と共存する暮らしをレポート。 |
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「川辺の暮らし」 | 川辺での、洪水と共存した大井川下流部に残る「水屋」のカタチを検証。水難との共生を探る。 |
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「海辺の暮らし」 | 津波被害が甚大だった東北沿岸部を巡り、平成の防災が如何に貧弱だったのかを検証、レホートする。 |
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「まとめ」 | 私たち日本人が、長い災害との歴史で、どのような共生を果たすべきなのか、取材を通して感じた「まとめ」です。 |
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