以前、息子隆太郎に９８０円の「お子さま釣りセット」なるものを買ってやり、２人で多摩川に行ったことがある。エサとして、ふかしいもを１センチ四方に切ってタッパーいっぱいに詰めて持たせた。

　ひと通り釣り方を教えてやったが、どうしても僕の真似がしたいらしく、サオをビュンビュン振り回してしまうから、アプローチし終わった時には、すでにエサはどこかに飛んで行ってしまう。

　「お父―さん、なかなか釣れないネ」

　さらに

　「お父―さん、エサがなくなっちゃったヨ」

　「あんなにいっぱいあったじゃないか」

　「ウ〜ン、でもお魚がみんな食べちゃったんだよ」

　「隆太郎、ちょっとイーって口開いてみろ」

　「イ〜〜〜ッ」

　その歯グキにはふかしイモの残ガイが、ぴったり張りついていた。・・・元来、イモ好きの隆太郎のこと、口の中にポイポイほうりこむわ、あっちこっちへ飛ばすわ、エサのふかしイモはアッと言う間になくなってしまっていた。

　あとは僕の周りをギャーギャー走り回ってくれて、ロッドを振っているうちに隆太郎を釣っちゃうこと、三たび・・・。

　あー、１メートルぐらいの“ビッグ・フィッシュ”に､僕は川中引きずり回されてるみたいだったのダ！

　河原を走るモトクロッサーが、暴走族にしか見えなくなっている、最近のわたし・・・。