水の中に潜るというのは、どんな形をもってしても楽しいものだ。

　スキューバのライセンスを取って、熱帯魚のようなスーツを着こなし、海に潜ってみるのもそれなりの新鮮な驚きといっぱい出会えることと思う。

　さしあたって“ヒト”いうのは水の中では息が出来ないことになっている。

　したがって水に潜っても、ときおり、潮吹きクジラのように息を吸いに水面まで逃げてこなくてはならない。

　まだ、水の中の世界をプールの中でしか知らなかったガキの頃、兄貴に連れられて行った磯で、水中メガネを通して見た海の中は、それはそれは感動的だった。

　ヒトデや貝、それに小さな魚。腰ぐらいの深さだったが、もう夢中になってのぞいて歩いた思い出がある。水中メガネと海水パンツ、たったそれだけで丸一日夢中になれたものだった。

　たとえば、素潜りを練習して３メーターまで潜れるようになったとする。するとおのずと磯で見ていた景色とはガラリと変わり、再びそこで新しい発見や感動が生まれてくる。

　さらに努力を続け１０メーターまで潜れるようにすれば、景色はもちろんのこと住んでいる生き物だって変わってくる。したがってこの遊びは努力を重ねるたびに、次々と新しい感動に出会っていける。

　プールでしか潜ったことのない人を、いきなり体中に機械をまとわせ何十メーターもの深さに連れて行くのは勘違いである。連れて行かれた本人が、“素晴らしい”と思ったことは、水深１メーターの磯潜りで十分味わえたことである。

　たった１メーターの深さでも、プールでは味わえない生き物たちの世界に触れることは出来る。まずはなんの不安もない状態で、その世界を十分に楽しむ方がより自然な気がする。

　その深さに飽きたら、練習を開始して３メーター潜れるにすればいい。

　さらに５メーター１０メーターときて、それでももっと深い所が見たいということになってから、初めて機械をくわえるものでも遅くはないと思う。

　ちなみに、素潜りの世界記録は、水深１２０メーターである。したがって、水の中の感動は、何も高いお金を払わなくてもできることになっている。

　水の中がとっても気になり始めたら、お金をたくさん使う前に、まず海水パンツをはくことをお勧めする。